新書のすゝめ 〜 アングラ・裏社会

1. 騙されるニッポン . . . 2007 / ベンジャミン・フルフォード

騙されるニッポン

外交官の息子としてカナダに生まれ、毎年発表される「世界長者番付」で有名なアメリカの経済誌“Forbes”(フォーブス)のアジア太平洋支局長を務めたジャーナリストが暴く「アメリカの正体」と「マスコミの陰謀」。市場原理主義という偽りの経済原理により日本に経済戦争を仕掛ける一方で自作自演の「9.11テロ」によって世界を欺き続けるアメリカ、新聞やテレビなどで真実を捻じ曲げ日本を貶(おとし)めてその弱体化を図る反日メディア、少子高齢化という危急の課題を放置し国民を見殺しにする日本政府... 自らの危険も顧みず、世界の「陰謀」を暴き続けるフルフォード本の入門に最適な一冊。


2. 解体されるニッポン . . . 2008 / ベンジャミン・フルフォード

解体されるニッポン

「アメリカとマスコミの正体」を糾弾して日本人に注意を喚起した前作・「騙されるニッポン」に続く第ニ弾。本書が出版された2008年3月はリーマンショックによる世界経済恐慌の直前なのだが、当時好況に沸いていた「世界一豊かな国」アメリカが、自らが生み出した邪悪な金融工学によって崩壊に向かっていると警告し、アメリカに代わる世界のリーダーの必要性を強く訴えている内容は、10年後の日本を見通していたかのよう。世界の金融・軍事そして石油を牛耳るアメリカの闇を暴き、第二次大戦からベトナム戦争・イラク戦争までの全てがアメリカの「自作自演」と推測する。「陰謀論」として切り捨てるのは簡単だが、世界史の観点から見れば非常に穿(うが)った内容。


3. ヤクザに学ぶ組織論 . . . 2006 / 山平 重樹

ヤクザに学ぶ組織力

極道・任侠・愚連隊などの「アウトローもの」を得意とするフリーライターが、昔から反社会分子として厳しい環境に置かれながらも維持・発展を続けている暴力団の実情を描いたルポルタージュ。100年前は神戸の港湾作業員を束ねた50人ほどの組合に過ぎなかった山口組が、三代目の田岡組長の時代に日本最大のヤクザ組織までに成長した経緯と、その厳格な管理体制について検証する。タイトルには「ヤクザに学ぶ」とあるが、暴力団の頑強な組織力を肯定して一般の組織もそれに学ぶべしと礼賛するものではなく、「組同士の交渉に際して、約束の時間に遅れると指を詰めてケリを付ける」といったような、一般の会社よりもはるかに厳しい約束事がそのグループ全体を強化するという組織管理論。ヤクザの世界を垣間見たい人には格好の入門書と言える。


4. 暴力団 . . . 2011 / 溝口 敦

暴力団

暴力団や闇の世界に深く食い込んだ迫力ある取材で定評のあるフリージャーナリストの溝口氏によるベストセラー本。日本最大の組織・山口組に代表される暴力団の実態をやさしく解き明かす「現代極道の基礎知識」とも言うべき本。博徒(ばくと=バクチ打ち)・的屋(テキヤ=縁日や盛り場で露店を開く業者)・愚連隊(ぐれんたい=暴走族などの不良集団)の3つから構成される暴力団について、そのシノギ(金の稼ぎ方)や人間関係、さらには警察とのつながり、そして万が一出会った時の対処法など、「カタギ」の皆さんにも良く分かるように解説している。


5. 地下経済 . . . 2002 / 宮崎 学

地下経済

京都のヤクザ組長の息子として生まれ、地上げ屋や公安のスパイなど裏の世界を渡り歩き、ついにはグリコ森永事件の犯人「キツネ目の男」の容疑まで掛けられたアウトロー作家・宮崎学によるノンフィクション。政治家-財界-官僚の「お付き合い」の実態を克明に描き、ヤクザ顔負けの銀行の手口・風俗業やパチンコ産業における警察利権など、その内容だけでなくユーモアを交えた語り口までもが面白い。企業や個人の経済活動は「表と裏」「地上と地下」が表裏一体となっており、経済そのものが「裏」であり「地下的」なものという目線で、カネを巡る社会の闇を暴く。


6. 偽装国家 〜 日本を覆う利権談合共産主義 . . . 2007 / 勝谷 誠彦

偽装国家

兵庫県の開業医の家に生まれ、名門・灘高校に進学するも、出来の良い弟が医院を継いだために家から放り出された形となった「かっちゃん」。早稲田から文藝春秋に入り、風俗ライターなども経験しながらコメンテーターとして歯に衣着せぬ発言で人気の「炎上歓迎コラムニスト」・勝谷氏が暴く「日本の病巣」。企業の「粉飾偽装」、期限切れを隠す「食品偽装」、マンションの「耐震偽装」、アメリカ産牛肉の「安全偽装」などなど、日本のあちこちに溢れている「偽装」を辛口な目線で問題提起し、その原因を「政治家と官僚」・「マスコミ」、そして「騙される国民」という「バカの三位一体」が支える「利権談合共産主義」にあると断じる“勝谷節”が痛快な一冊。 残念ながら酒による肝炎で2018年に57歳という若さで亡くなったが、悪を糾弾し続けた生き方は「あっぱれ!」と言える。


7. 死刑絶対肯定論 . . . 2010 / 美達 大和 (みたつ・やまと)

死刑絶対肯定論

自らが犯した計画殺人によって2人もの命を奪い、無期懲役の判決を受けて現在も服役中である懲役囚が塀の中で記した手記。受刑者にしか分からない殺人犯や刑務所の実態を描き、加害者よりも軽んじられている被害者の人権に異を唱えながら、死刑廃止論を真っ向から否定する。
『10年なんてションベン刑だ』『12, 3年は、あっという間』『15年くらいで一人前』などと呑気に構え、被害者やその家族の心情など微塵も考えない死刑囚に「反省」や「更生」を求めるなど無理な話であり、こんな連中を国民の税金で生き長らえさせる事こそ愚の骨頂と断じる。死刑囚にとっては「死と向き合うこと」のみが悔悛(かいしゅん)の情につながる唯一の方法であり、死刑こそが彼らに相応しい「人間的な刑罰である」と主張する。死刑反対派が推進する「人権のインフレ」によって、「生きて償う」などという愚劣な詭弁を弄(ろう)す死刑囚らを「粛々と執行せよ」と訴え続ける。


8. 人にいえない仕事はなぜ儲かるのか . . . 2005 / 門倉 貴史

人にいえない仕事はなぜ儲かるのか?

2000年代以降に経済成長を遂げた4ヶ国のBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)に続く新興国として、ベトナム・インドネシア・南アフリカ・トルコ・アルゼンチンの頭文字を連ねたVISTAを提唱したエコノミストの門倉氏。専門は地下経済であり、本書はそんな「人に言えない」ビジネスの舞台裏を披露する。高額の年俸を稼ぐ野球選手が個人会社を設立して節税を行う合法的なものから、違法ドラッグや違法エステなどのキワモノ系、さらには完全アウトの偽ブランド販売や振り込め詐欺などの手法までもレクチャーしながら、日本の複雑な税制についても解説していく。


9. 日本の風俗嬢 . . . 2014 / 中村 淳彦

日本の風俗嬢

風俗ライターを皮切りに貧困・介護・超高齢社会などをテーマに社会に斬り込むフリーライターが、 ホテヘル・デリヘル・ピンクサロンなどの表風俗から「ちょんの間」・「本サロ」・そして「大陸系デリ」と呼ばれる裏風俗まで、その実態を追いながらそこで働く女性たちをレポートする。経済的な理由で「泣く泣く」風俗に身を落としたと言われたのは戦後からバブル崩壊の1990年頃までで、今ではごく普通の一般女性が明るく「ポジティブ」に働く世界であり、高学歴・高スペックのいわゆる「勝ち組」の女性も少なくない。現代日本の風俗嬢たちのリアルがそこにある。


10. 日本の暗黒事件 . . . 2017 / 森 功

日本の暗黒事件

金権政治の象徴とされた戦後最大の宰相・田中角栄を逮捕に追いやったロッキード事件(1976)、「かい人21面相」を名乗る犯人が警察を手玉に取ったグリコ・森永事件(1984)、国家転覆を図ったテロのオウム真理教・地下鉄サリン事件(1995)など、1970年以降に発生しながら今もって真相が解明されていない10件の「暗黒事件」について、元・新潮社のジャーナリストが自らの取材秘話も明かしながらその闇に挑む。戦後の日本社会にとって大きな出来事に向けて、今一度、説けない謎に光を当てた一冊。