新書のすゝめ 〜 人生の終活・遺言

1. 下山の思想 . . . 2011 / 五木 寛之

下山の思想

第二次大戦での敗戦によって国土が焼野原となった状態から、国民一丸となった見事な成長によって世界第二の経済大国となる奇跡を起こした日本。これを登山に例えると、苦労して頂上に登り詰めた幸福感に浸っているという状態なのだが、その後に続いた「失われた20年」によって低迷している今こそ実りのある「下山」に備えるべきと訴えるのは、13歳で入植先の平壌で終戦を迎え、引揚者として過酷な体験をした作家の五木寛之氏。 2011年に起こった東日本大震災を「第二の敗戦」として受け止め、日本人はもう経済的な繁栄に頼らない「精神的幸福」を求めるべきと啓蒙する。 登った山は必ず降りねばならないように、人生という名の登山にも「価値ある下山」こそが重要であると説いている。


2. 思い通りの死に方 . . . 2012 / 中村 仁一・久坂部 羊 (くさかべ・よう)

思い通りの死に方

特養老人ホームの診療所長として何百人もの「自然死」を看取った経験から、『大往生したけりゃ医療とかかわるな』(2012)を出版した中村氏と、医師で作家という二足のわらじを履き、『日本人の死に時 〜 そんなに長生きしたいですか』(2007)などの著書で知られる久坂部氏のお2人による「理想の死に方」。雑誌やテレビなどあちこちのメディアで健康や長生きが美徳とされ、「健康のためなら死んでも良い」のように変な風潮が蔓延する昨今において、死を迎える本人にとって最も幸せな「逝き方」とは何かを議論する。人間の死亡率は100%であるのは疑う余地のない事実。ならば人生の終わりをどのように迎えるのか、迎えさせてあげるべきなのかについて「看取りの達人」が指南する。


3. 366日 命の言葉 . . . 2013 / 大橋 巨泉

366日 命の言葉

昭和のマルチタレントとして長く活躍した大橋巨泉が、自ら「がん」との闘病生活を続けている中で記した「遺作」とも呼ぶべき終活本。「みんなちがって, みんないい」〜3月10日/金子みすゞ(詩人)、「私の墓は, 私の言葉で充分です」〜5月4日/寺山修司(劇作家)、「転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け」〜8月7日/岸信介(政治家)..1年366日のそれぞれの日に亡くなった古今東西の有名人を、その遺した言葉と共に紹介してコメントを加えた一冊。巨泉氏の幅広い見聞と読書量には驚くべきものがあるが、登場した366人のうち実に40人以上と交流があったのにもビックリ。


4. 大人の見識 . . . 2007 / 阿川 弘之

大人の見識

2012年のベストセラー『聞く力』に続き2匹目のどじょうを狙った『叱られる力』も好評の阿川サン。彼女によれば、本書の著者である作家・阿川弘之氏は大変に怒りっぽくて「コワいお父さん」だったらしい。明治から昭和にかけて文壇で活躍して「小説家の神様」と呼ばれた志賀直哉に師事し、連合艦隊の総司令官の人間像を赤裸々に描いた『山本五十六』など、数多くの戦記文学や随筆を残した著者が、歴史の中で失われつつある日本人の美徳と倫理をあらためて問い直す。日本人の見識、英国人の見識、さらには孔子や天皇の見識にまで言及し、後の世代の人々が叡智(えいち=優れた知恵)を養う一助になればとの思いを込めた一冊。文体は優しく、阿川サンが言っているのとは正反対で全然コワくない。


5. 死なないつもり . . . 2016 / 横尾 忠則

死なないつもり

「シュールレアリズムな人生は面白いけど、コンセプチュアルな人生はヤだね。」と語るのは、頭の中に「超現実」が渦巻いているのでは?...と思われるような画風で知られる横尾忠則氏。「生きる理由なんて、永遠に分からない」「自分が何者かなんて、どうでもいい」などなど、人生について・老いについて自由な発想を展開する。「いつ死んでもいいとは全く思わない。生きていれば新しいものと常に出会うと思っています」と語るセンセイの生き方こそ、シュールで現実的なのかも。


6. 終活なんておやめなさい . . . 2013 / ひろさちや

終活なんておやめなさい

東大でインド哲学と仏教を学び、宗教評論家という肩書を持つ著者のペンネームは、哲学を意味する「フィロソフィー」とサンスクリット語の Satya(真実)から取ったという筋金入りの宗教マニア。 仏教の開祖であり、80歳で死去(入滅)するまで教えを説いた釈迦が「死」について語り続けたのは「死後について一切考えないこと」であるという。自分が死んだあとどうなるか、などいくら考えても分からない。ならば下手に考えるよりも、今の楽しい人生を生きる事こそが終活なのだ、というのが釈迦の教えであると解説。「遺言書は残すな」「お墓はなくてもいい」など、仏教のプロが提言する「終活しないススメ」。


7. 安楽死で死なせてください . . . 2017 / 橋田寿賀子

安楽死で死なせて下さい

『愛と死をみつめて/1964年』、『おしん/1983年』、そして『渡る世間は鬼ばかり/1990年〜』など、数々のヒット作を手がけた脚本家の橋田センセイが、御年90歳を超えたのを契機に「自分の死に方」についての希望を記した書。戦時中は死ぬ事ばかり考えていた少女は、20歳で終戦を迎えると逆に生きる事に一生懸命で突っ走って来たのだが、最近になってまた死について考えることに。人間の尊厳とは何なのか?...と考え抜いた結果、たどり着いた理想郷が「死に方を選べる社会」。誰もが必ず迎える「死」について、若いうちから向き合うことを説いている。