新書のすゝめ 〜 世界情勢を知る

1. 知らないと恥をかく世界の大問題 . . . 2009 / 池上 彰

世界の大問題

テレビで人気のジャーナリスト・池上サンが解説する「世界の大問題」。2008年のリーマンショックで始まった世界のパワーシフト、アメリカ一極集中の崩壊による中国やロシアの勢力拡大、中東やモンゴルなど世界各地における紛争や小競り合い、そして2009年に政権交代が起こった日本の混乱... 多くの人々にとっては知らなくても別に「恥をかく」ほどではないが、知っておけば現実として起こっている様々なニュースの背景が理解できる。本書は2019年出版の「パート10」まで続いている人気シリーズの第1弾だが、何巻目の何章目でも、どこから読んでも分かりやすくて面白く、そして役に立つ。


2. 池上彰の「ニュース、そこからですか !?」 . . . 2012 / 池上 彰

ニュースそこからですか1?

上記の「世界の大問題」から3年後の2012年、今度はバラエティータッチで池上サンが解き明かす「世界の50大問題」。「大阪都とは何ぞや?」・「スンニ派とシーア派どう違う?」・「中国が北朝鮮を見捨てられない理由は?」などなど、チコちゃんでも知ってなさそうな質問に優しく答えてくれる。 「そっからかい〜 !?」とツッコまれるほどの初級レベルからの解説が気持ち良く、普段から新聞を読まずニュースに慣れ親しんでいない人でも楽しめる。たとえニュースの中身を知ってなくても、「分からない人に分かりやすく説明する」というノウハウが学べるお得な一冊。


3. 世界を知る力 . . . 2009 / 寺島 実郎 (じつろう)

世界を知る力1

三井物産の駐在員として米国で10年の経験を積み、現在は三井系シンクタンクの日本総合研究所で会長を務める寺島氏が語る「世界のいま」。反政権プロパガンダと批判され続けながら30年も続いている日曜朝の情報番組・「サンデーモーニング」(TBS)において、リベラルな出演者たちの左巻きな発言に流されつつも場を仕切る緩衝剤の役割を務め、穏健な中道保守的なスタンスで「大人の対応」を見せる寺島氏による国際関係論。本書は2009年に民主党政権が誕生した直後の出版で、その当時の世界における日本の現状と進むべき方向を示したもの。民主党が国民に「喝!」を突き付けられて野に下り、自民党が政権に返り咲いて安倍一強が続く今日でもその内容は陳腐化しておらず、学生から社会人まで幅広く気軽に読めて腑に落ちるロングセラーと言える。第ニ弾の『世界を知る力・日本創生編』(2011)も併せて読んでおこう。


4. 初歩からの世界経済 . . . 2013 / 日本経済新聞社・編

初歩からの世界経済

日本を代表する経済紙の日経新聞が2013年4月から朝刊の国際面で連載を始めた『初歩からの世界経済』を新書化したもの。経済のグローバル化が進み、分かりにくくなる一方の国際ニュースを何とか分かりやすく読者に伝えたいとの思いから、新学期を迎えた大学生や就職したばっかりの社会人を対象に、世界経済の基本知識・ニュースの背景などを盛り込んだ記事には多くの反響が寄せられた。本書はこれらの記事をさらに幅広く・詳しく・丁寧に紹介したもので、「グローバル経済」の概要とアメリカ・ヨーロッパ・東南アジアそしてBRICSなど地域別の「基礎知識」を復習した上で世界経済をレクチャーする、とっても分かりやすい一冊。


5. これから世界はどうなるか . . . 2013 / 孫崎 享 (まごさき・うける)

これから日本はどうなるか

2009年に発足した民主党・鳩山政権の外交ブレーンを務め、20万部を超えるベストセラーとなった『戦後史の正体』や『アメリカに潰された政治家たち』などでアメリカ陰謀論を立て続けに糾弾する外務省OBの著者が、アメリカの凋落と中国の進出という現実に際して日本の針路を説いた一冊。「ロッキード事件から郵政民営化、そしてTPPに至る全ては米国の陰謀だった」と主張する反米派である一方で、「尖閣諸島は日本固有の領土ではない」という眉中思想も併せ持つ著者には反論も多いが、リベラル派の元外交官による洞察(どうさつ)は大いに意味深い。大戦後も相変わらず朝鮮半島やベトナム・イラクなどで次々と戦争を仕掛ける米国の正体に触れ、その米国に歩調を合わせる日本政府と官僚の問題を鋭く暴き出している。日米安保条約や米国の核の傘を信じて疑わない人々にとっては「目からウロコ」の書と言える。


6. 2017年 世界の真実 . . . 2016 / 長谷川 慶太郎

2017年 世界の真実

毎年恒例のシリーズ本・『長谷川慶太郎の大局を読む』の2017年版でトランプ新大統領の誕生を予測して的中させた国際エコノミストの長谷川氏が、それとは別に2014年から毎年出版している『世界の真実』シリーズの2017年版。新聞やテレビでは報道されない政治・経済の裏話や各国の要人とのエピソードが大変に面白く楽しめる一冊。残念ながら2019年に91歳で亡くなられたが、 世相の論客として、また保守層のオピニオンリーダーとして残した功績は大きい。


7. 日本人が知らない世界の歩き方 . . . 2006 / 曾野 綾子

日本人が知らない世界の歩き方

23歳で文壇デビューを果たし、第一次・第二次大戦後派に続く「第三の新人」世代として遠藤周作や吉行淳之介・そして夫である三浦朱門らと共に文学会で活躍した曾野氏。40歳を迎えた1971年からは海外邦人宣教者活動援助後援会というNGO(民間活動団体)で何と40年間も代表を務め、世界各地で現地の人々のために働く日本人の神父や修道女の活動を支援し続けたのだが、その彼女が行く先々で見たこと・感じたことを一冊に集約したのが本書である。日本人にとって身近な外国であるアジア諸国や欧米の先進国は元より、南米アマゾンで見た「絶望的な大自然」、アラブで気付いた「日本人の非常識さ」、アフリカの僻地で改めて認識した「日本人に生まれた贅沢さ」... 世界の果てまで旅した著者が綴る、日本人が知らない旅のオムニバス。


8. 日本は世界4位の海洋大国 . . . 2010 / 山田 吉彦

日本は世界4位の海洋大国

日本が持つ海洋面積は世界で6番目の広さなのだが、海水の体積で見ると世界4位であると主張するのは、東海大学の海洋学部で教授を務める一方で、海をテーマとした文学作品でも知られる海洋問題研究家の山田氏。四方を海に囲まれた日本が海と共に繁栄した歴史的背景に始まり、海水に含まれるウランやチタンなどの天然資源やマグロなどの水産資源、さらには波や海流などを利用したエネルギー開発など、海が与えてくれる大きな可能性について考える。その一方で中国が尖閣諸島を、韓国が竹島を、ロシアが北方領土をと、「狙われる」日本の海を守るための方策を提案する。韓国での学会に出席して、反日の活動家から罵声を浴びながらも竹島の日本領有を主張した山田氏の勇気ある行動には拍手を送りたい。


9. 世界経済 まさかの時代 . . . 2016 / 滝田 洋一

世界経済まさかの時代

著者の滝田氏は日経新聞の編集委員で、2018年からは平日夜の情報番組・『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京系)のキャスターも務めるソフトな人柄のジェントルマン。世界経済の混乱を的確に示した著書『世界経済大乱』に引き続き、その第ニ弾として放ったのが本書である。人生には「上り坂」「下り坂」、そして「まさか」という3つの坂があると言われるが、今こそその「まさか」が世界経済を襲っていると分析する。イギリスのEU脱退や、アメリカ大統領選挙におけるトランプ氏の躍進、ハーグ仲裁裁判所の判決を物ともしない中国による尖閣諸島の領有権主張...。世界の常識では「ありえない」事が次々と勃発する中で、日本は果たして安定的な成長を続けることが出来るのか?金融記者としてスイス駐在の経験もある著者が読み解く、世界経済の「まさか」。


10. 世界の軍事情勢と日本の危機 . 2015/ 高坂 哲郎 (こうさか・てつろう)

世界の軍事情勢と日本の危機

西暦20XX年、人為的に作られたと見られる新型ウィルスとイスラム過激派が全米で起こした同時テロによってアメリカが混乱する中、ロシアと中国が欧州と東アジアで軍事作戦を遂行する。日本が原因不明のサイバーテロや原発への攻撃などで機能不全に陥る中、ロシア軍が北極海から南下して北海道を手中に収める一方で中国の特殊部隊が沖縄を始め日本各地で占領を開始する。中露の核兵器による脅威を感じたアメリカは日米安保を解消、自国民を「人質」に取られた自衛隊は戦う事も出来ず「まさかの不戦敗」を迎え、日本に中国の傀儡政権が誕生...。衝撃のプロローグで始まる本書だが、これらは決してフィクションではなく、現実に起こっている国際情勢や諸大国の思惑に基づいた「最悪のシナリオ」であり、しかも充分に起こり得る近未来であると説くのは、日経新聞の政治部で防衛庁・外務省を担当した後に防衛省の防衛研究所で安全保障を学んだいわば「軍事のプロ」。平和ボケした日本人が今どのような脅威に晒されているのか、その命をどう守るべきなのかについて現実的な目線で綴った本書は、紛れもない「ノンフィクション」である。