新書のすゝめ 〜 食・食材・食料

1. 日本人は何を食べてきたのか . . . 2003 / 永山 久夫

日本人は何を食べてきたのか

1934年(昭和9)生まれの料理研究家で、最近では地元・福島のラジオ番組「100歳食入門」で健康や長寿に関する食情報を発信したり、NHKテレビでチコちゃんに日本の食文化をレクチャーしたりと精力的にご活躍の永山氏による食文化史論。肉や魚・野菜や果物など、2300年前の縄文時代の華やかな食生活を再現して、米を始め大陸から伝わった食べ物や南蛮交易がもたらした食材の進化をたどる。塩や酢・醤油などの調味料のルーツから、日本人がどんなものを食べてきたのかを探り、食材や調理法・さらには包丁のような調理道具や食事作法の歴史までも踏まえ、日本の食文化史を解き明かしていく。


2. 食の世界地図 . . . 2004 / 21世紀研究会・編

食の世界地図

『常識の世界地図』『人名の世界地図』『民族の世界地図』など、世界地図シリーズで定評のある文芸春秋【21世紀研究会】が描く「世界の食」。有史以前から南米アンデスで栽培され、16世紀頃にヨーロッパに伝わったとされるジャガイモの歴史から始まって、世界中で愛される食材や料理の起源・国籍・さらには語源など感動のストーリーが詰まっており、まるで「バーチャル世界史紀行」のよう。世界各国の食材・レシピをまとめた巻末の「世界料理小事典」は圧巻。


3. 日本の「食」は安すぎる . . . 2008 / 山本 謙治

日本の食は安すぎる

食生活ジャーナリストとして、またちょっと聞き慣れない「農産物流通コンサルタント」として活躍する「やまけん」こと山本謙治が放った新書第一弾。新鮮・安全・しかも美味しい食品というのは高くて当たり前という信念のもと、値段の安すぎる日本の外食や食材を疑問視し、その謎を明かす。日本の食品業界では「強い消費者」を満足させるための苦労が生産者側に転嫁されており、安い食材を大量に供しなければ回らない状況こそが添加物の大量使用や食品偽装を生み出していると考える。流通の利便性や生産効率だけが優先される結果、スーパーなどでは「安すぎる食品」が大量に出回っており、こうなると健康面のみならず社会構造的にもヤバい状況であると訴える。安い食品を探し求める事よりも、少しばかり高くても優良な生産者を「買い支える」ことの重要性を説いた本書は消費者の良心に訴えるパワーがある。グルメサイトとは一線を画し、「よい食事」を追求してひたすら旅を重ねる食の記録・『やまけんの出張食い倒れ日記』は傑作!
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/


4. 水ビジネス . . . 2009 / 吉村 和就 (かずなり)

水ビジネス

海洋面積が7割以上も占めることで「水の惑星」と呼ばれる地球だが、水全体の97.5%は海水で、淡水は僅か2.5%。しかもその淡水の8割強が氷山・氷河・地下水などで、地表の水資源は全体の約0.01%しか無いと言われる。 「水環境問題」の専門家として日本の環境技術を広め、世界が抱える水問題について情報を発信し続ける著者が、人類にとって最も重要な「水」と、それを取り巻くビジネスの実態を明らかにする。日本のファストフード店のハンバーガーには、世界中の生産地で小麦を育て、家畜を養い、野菜を栽培するために1個あたり千リットルもの水が使われている...!? このバーチャルウォーター【Virtual Water:仮想水】という概念は、日本の水資源の多くが輸入に依存している現実をデジタルに示すものであり、「水と安全はタダ」などと思っている日本人の暮らしが、実は世界中から水のお世話になっているという実態がよ〜く分かる一冊。


5. 食の戦争 〜 米国の罠に落ちる日本 . . . 2013 / 鈴木 宣弘

食の戦争

食料の自給率が200%を超える豊かな国は世界でカナダとオーストラリアだけ。100%以上で見てもアメリカとフランスぐらいで、その他の国は全て100%未満。日本に至っては40%、即ち大半が輸入に頼っている状況なのだが、そんな中でアメリカの「食料戦略」が日本の脅威となっている。大豆・小麦・トウモロコシなど、官民一体で輸出先の日本に攻勢を仕掛け、日本向け穀物の残留農薬の規制緩和や、モンサント社に代表されるバイオメジャーによる遺伝子組み換え品種の開発など、攻撃的な戦略によって「食の覇権」を狙っている....? 農林水産省OBで、農業経済学を専門とする著者が、食のグローバル化が進む中、お得意の金融工学の論理で「食」の支配を企むアメリカの陰謀を暴き、「強い農業」を目指す日本の進むべき道について提言する。


6. じつは怖い外食 . . . 2014 / 南 清貴

じつは怖い外食

「ファミレスやコンビニのサラダは殺菌液に漬けこんで栄養分が抜けた野菜クズ」「ソフトドリンクの赤い色は毒性のある昆虫・カイガラムシの抽出液」「100円バーガーの材料コストは28円で、中国産の病気の鶏が使われている可能性も」などなど、外食に潜む数々の危険性を訴えるのは自称・「フードプロデューサー」の南氏。「食とは人を良くすると書く」を信条とし、身体と食の関係を追求する栄養学を学んだ末の決断として、外食産業にとっては大変に目障りな本を連発する勇気と行動力が共感を呼んでいるが、一方でそのストレートな物言いには反論も多い。確かに、高級食材とされる霜降り牛肉を、「無理な肥育をしたために脂肪肝と動脈硬化を起こし、糖尿病によって目が見えなくなった牛」と言ってしまえば身もフタもなく、食欲すら湧かなくなるかも。自らの信念を貫き、巨大な敵とどこまで闘うことが出来るのか? 南氏の頑張りに注目したい。


7. 毒があるのになぜ食べられるのか . . . 2015 / 船山 信次

毒があるのになぜ食べられるのか

夏バテに抜群の効果と言われる鰻【うなぎ】は刺身で食べると結膜炎や呼吸困難を引き起こす? 滋養強壮や咳止めに効く【ギンナン】は食べ過ぎると鼻血や痙攣(けいれん)の元となる? アワビを猫に食べさせると耳が腐って落ちる....!? 東北大学で薬学を学び、その母校で講師も務めた著者が、食べ物と薬の関係を表した中国の「薬食同源」にちなみ、薬と毒との切っても切れない関係を「薬毒同源」と唱えて、毒にも薬にもなる食べ物との上手な付き合い方を提唱する。2011年3月に起こった東日本大震災の際に仙台市の自宅で家族と共に被災し、食料に窮しながらその有難さを痛感した経験から食べ物の毒化について再認識。食と毒との深〜い関係を解き明かす。


8. コスパ飯 . . . 2017 / 成毛 眞 (なるけ・まこと)

コスパ飯

著者は実業家の成毛眞である。 ビル・ゲイツの片腕として米マイクロソフトの日本支社長を務め、最近ではインスパイアだのスクウェアだの、何だかリッチに聞こえるビジネスを次々と展開してる、あの成毛眞である。そんなセレブなお方に「コスパ」なんて言われても、自分のような庶民には.....などと思いきや、これがどうも手の届きそうなメニュー・食材のオンパレードで安心して読める〜! 北海道のご出身という事でジンギスカンと毛ガニには無限の愛情を注ぐ著者であるが、吉野家の牛丼や東銀座にある日本最古のインド料理店「ナイルレストラン」の看板メニューも見落とさない慧眼(けいがん)には感服する。その一方で「栗大福とバーボンが絶妙の相性」というパイオニア的感覚は、漫画家の東海林さだお氏が週刊朝日に30年以上も連載しているエッセイ・『あれも食いたいこれも食いたい』に通じる【スピリッツ】を感じさせる。結局は好きなモノを買って「家で食べる」のが最高のコスパ飯という「オチ」にはなぜか安心させられる。


9. 和食の知られざる世界 . . . 2013 / 辻 芳樹

和食の知られざる世界

日本にフランス料理を紹介する一方で日本料理を世界に認めさせ、今や日本最大の「食」の教育機関と呼ばれる辻調理師学校を大阪に開校した辻静雄の長男・辻芳樹が語る和食の神髄。父の英才教育により12歳から27歳まで15年もの年月を親元を離れたイギリス・アメリカで食の修行に費やし、現在は辻調グループ代表を務める傍ら、ニューヨークを始め世界中で称賛される和食の魅力と真実を追求する。