新書のすゝめ 〜 健康・医療

1. 病気を治す食べ方、食べ物 . . . 2007 / 石原 結實 (ゆうみ)

病気を治す食べ方・食べ物

医師として40年以上にも及ぶ経験から自然療法の考えに基いて、「人参リンゴジュース」や「生姜紅茶」、そして「体温め」・「少食」などの健康法を啓蒙、『生姜力』『体を温めると病気は必ず治る』『医者いらずの食べ物事典』などのベストセラーでも知られるイシハラクリニック(東京都江東区)の院長・石原結實が贈る健康法。ガンや高血圧・肝臓病・糖尿病・心臓病などの現代病は、人間の体に合わない「食べ方」をしてきた事が原因であると分析し、薬効のある「食べ物」を体調に応じて摂取することが一番の健康法と結論付ける。医療ではなく「食」こそが健康の源と説いた一冊。


2. 危ない薬の見分け方 . . . 2007 / 浜 六郎

危ない薬の見分け方

「薬のチェックは命のチェック」というコンセプトに基づいて1997年に自らが立ち上げたNPO法人・「医療ビジランスセンター」(Vigilance = 監視役)で理事長を務める内科医が、薬の効用と危険性についての持論を展開する。インフルエンザの治療薬として知られる「タミフル」、夢のような新薬と騒がれた抗がん剤「イレッサ」、日本一売れている抗うつ剤「パキシル」...。 業界やマスコミがその効果を宣伝する一方で、闇に葬られる薬害の実態や利権を争う政官財の癒着がもたらす歪んだ薬事行政を暴き、薬が引き起こす弊害を解き明かす。国民が正しい知識を身に付けて、メディアに踊らされずに自分の身を自分で守るための「自衛論」を、業界からの反発覚悟で力説する。


3. 退化する若者たち 〜 歯が予言する日本人の崩壊 . 2006/ 丸橋 賢

退化する若者たち

群馬県の高崎市で1974年に開業し、今や全国から患者が集まる「丸橋全人歯科」の院長が予言する「日本人の崩壊」。元気がなく疲れやすい・動きが鈍くて持久力がない・やる気が出ずに学校や仕事に行けなくなった若者を診察する中で発見した原因は、歯の「噛み合わせ」の悪さだった。昔の日本人と違い、甘くて柔らかい物しか食べなくなった現代の子供の歯と顎は退化する一方で、歯並びや噛み合わせの少しのズレが身体や心の大きな歪みを引き起こしていると考察する。医学的に、また人類の進化にも照らし合わせ、人間の退化は口から進むと唱える著者が日本人の文化や精神にまで警鐘を鳴らした一冊。


4. 「病院」がトヨタを超える日 . . . 2011 / 北原 茂実

病院がトヨタを超える日

東大の医学部を卒業後、病院での勤務経験を積んだ1995年に東京・八王子で自らの名を冠した「北原脳神経外科病院」を開設、「世のため人のため、より良い医療をより安く」・「日本の医療を輸出産業に育てる」という理念のもと、「ニッポンの医療を変える男」として注目を集める北原医師。国家予算の半分に迫る勢いで増え続ける国民医療費や、医師不足による医療崩壊という大問題を解決するには、医療を「福祉」ではなく利益を生みだす「産業」に転換することが唯一にして最善の方策と考える。多忙な診療の傍らで経済学や海外の医療事情を学んだ著者は「今の日本経済にとって最大の成長産業は医療」と結論付け、医療の危機を「産業化」で乗り切ろうという斬新な発想を展開する。その理念どおり2016年にはカンボジアに病院をオープン、産業としての医療を極め、「日本の病院まるごと輸出」を実現した。評論家ではない行動家が熱く語る医療改革論。


5. 「余命3カ月」のウソ . . . 2013 / 近藤 誠

余命3ヶ月のウソ

慶應の医学部を首席で卒業というから大変な秀才なのであろうが、がん治療の現場に40年以上も関わった経験から「がんは放置するのが一番」との持論を繰り広げ、自ら異端児としての道を選んだ近藤医師。歩いて病院に来られる状態の患者に向かって「余命3ヶ月」などと言う医者は誠意が無いか知識が無い、あるいはウソをついていると断言し、本書ではその「ウソ」にメスを入れる。医学会やマスコミから大バッシングを受けながら、「正義の医師」としての信念を貫き通す近藤氏が、余命宣告の矛盾に異を唱えて患者本位の治療を提言する。


6. 大往生したけりゃ医療とかかわるな . . . 2012 / 中村 仁一 (じんいち)

大往生したけりゃ医師とかかわるな

京都の特養老人ホームの診療所長として「看取りの医療」を日々実践しながら、医師による延命治療の拒否を唱え続ける中村医師。人間にとって最高の死に方は「自然死」であるという持論を展開し、前項の近藤氏との共著・『どうせ死ぬなら「がん」がいい』(2012)で医療の常識を覆した。半世紀にも渡る医療経験に基いて、人間とは死に方・死に時を自分で決めるのが幸せと結論付け、「今を輝いて生きるために」をキャッチコピーで1996年から主宰する「自分の死を考える集い」では、自ら死装束を着て棺桶に入る「模擬葬儀」によって人生を考え直すという超ユニークな活動で高齢者たちから絶賛を浴びている。「生きる」とは「逝きる」こと、と教えてくれる一冊。 


7. 偽善の医療 . . . 2009 / 里見 清一

偽善の医療

肺癌を専門とする呼吸器内科医として20年以上の臨床経験を持ち、多くの著書を世に出している医療評論家の里見氏による新書デビュー第一弾。2001年に厚労省が出した「アホみたいな」通達によって病院に蔓延した「患者さま」という変な呼称、末期医療や安楽死をめぐるマスコミの混乱や偽善などに異を唱え、「セカンドオピニオン」や「インフォームドコンセント」のように今の医療では常識とされている手法をぶった斬る。医者の本音や医療現場の真実をストレートに訴える論調は、夏目漱石の『坊ちゃん』や社会学者の『古市クン』を彷彿させるほど小気味よく、そして何よりも「面白い」。医学会の権威と呼ばれる長老たちが眉をしかめるような意見も多いが、患者への愛情を持って本音を語り続ける里見氏にはエールを送りたい。


8. 無敵の「1日1食」 . . . 2016 / 三枝 成彰 (さえぐさ・しげあき)

無敵の1日1食

東京藝大の作曲科を主席で卒業し、クラシックやオペラなどを手がける一方でTV出演でも人気を博し、若い頃は「音楽界のプリンス」などと騒がれた三枝センセイ。 30年前に健康法として始めた「1日1食」生活の効用を自ら確信した2016年に出したのがこの一冊。40歳を過ぎるまで毎日が外食という生活だったのが、朝と昼を抜いて夕食を美味しく食べる生活に切り替えた事で頭が冴え、仕事の効率が3倍もアップしたという実体験を語る。さらには「自然医療」をモットーとして自ら伊豆に「断食道場」を開いて多くの人々の健康指導を続けている医師の石原結實(ゆうみ)と、身近な食品・日用品・家電製品などの危険性を訴えた著書『買ってはいけない』(1999/週刊金曜日)で有名な環境ジャーナリストの船瀬俊介との対談コーナーでは、1日1食の効用を絶賛している。ただし誰でも実践できる健康法とは言えなさそうで、読者の反応は「人それぞれ」。


9. 医療にたかるな . . . 2013 / 村上 智彦

医療にたかるな

北海道で生まれ育ち、薬剤師から医師に転身して地域医療の再生に取り組む著者が、40億円もの負債を抱え経営難に陥った市立病院を2007年から引き継いだ体験を元に、医療にたかる「敵」の正体を暴く。日本の医療費が高騰している理由や、手厚い健康保険制度を逆手に取った悪質な「ごまかし」と「甘え」を糾弾し続けたが、残念ながら急性骨髄性白血病にて2017年に56歳の若さで死去、「最強の地域医療」が彼の遺稿となった。


10. 成功する人は缶コーヒーを飲まない . . . 2011 / 姫野 友美

成功する人は缶コーヒーを飲まない

「できる男は○○が・・・」の類(たぐい)のビジネス本かと思いきや、東京・五反田でクリニックを開設する自称・「ドクターひめの」が提唱する心とからだの健康法。「草食男子は栄養不足」「仕事ができる男の条件」など栄養学的な見地からの提案や、「仕事の効率を上げる食べ方」や「頭の回転を早める良い油」などを紹介して現代に生きるビジネスマンの健康を後押しする。なお本書タイトルの「成功する人は...」の答えは、缶コーヒーに含まれる大量の砂糖が血糖値を急激に上げ、それを抑えようとしてインスリンというホルモンが分泌されるために今度は血糖値が急激に低下、エネルギーとなるブドウ糖が不足してガス欠状態になった脳が眠気を引き起こすばかりでなく、うつ病やパニック障害を引き起こすというもの。お心当たりの方は気を付けて。